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イデオロギー対立の時代-ヒラリー・クリントン氏の自伝を読んで

  • 執筆者の写真: Hiroyuki Ohe
    Hiroyuki Ohe
  • 2019年1月7日
  • 読了時間: 2分

 ヒラリー・クリントン氏が出した「」を手に取って読んだ。原書は2017年9月の出版であり、和訳は昨年7月出版された。興味深かったのは、冒頭に係れている事項が「なぜ、自分は選挙に負けたのか」ではなく、「負けた自分の動静や周りの人たちの反応」に終始しているという点だ。

 ヒラリー・クリントン氏は、2016年の米国の大統領選挙に、民主党の候補として出馬したのである。オバマ政権期には、国務長官を務めていた時期もあるが、彼女がこの時期に出したのであれば、当然大統領選挙を振り返ることがメインになるであろう。敗者が振り返るとき、最初に考えるのは「どうして負けたのか」という点ではないだろうか。しかし、同書は、負けた自分と周りの状況を描写することが中心であり、「なぜ負けたのか」は巻末に申し訳程度に書かれているだけなのである。その内容も多くは、電子メール問題やロシアの介入などヒラリー・クリントン氏以外の事項について書かれている。


 他方でこの本は2017年12月10日の段階では、ハードカバーがおよそ45万冊売れており、米国ではベストセラーだと言われている。

 米国では、イデオロギー対立の様相を呈していると聞く。そのような状況を考えると、ヒラリー・クリントン氏の本の意図がよく分かる。ヒラリー・クリントン氏を(純粋に)支持する人からすれば、ドナルド・トランプ氏は悪(もしくは不正義)な存在であり、ヒラリー・クリントン氏が負けたこと自体が、世の中が悪(もしくは不正義)に満ちているのだ。イデオロギーとイデオロギーは、技術的に戦うのではなく、勝つか負けるかでしかない。負けてしまえば、敵対的なイデオロギーが買ってしまう世の中が邪悪なだけである。負けた側は、なぜ負けたのかなどと考える必要はないのだ。むしろ支持する者(イデオロギー)が、「自分は負けていない」と気概を示し、支持者に「まだ世の中捨てたもんじゃない」と思わせなければならない。本書は、ヒラリー・クリントン氏が今もなお健在であることを強く印象付ける内容になっている。また、ヒラリー・クリントン氏が「女性初の大統領になるはずだった」と、ヒラリー・クリントン氏が何たる存在であったかを想起させる内容になっている。

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