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諸外国から見る日本

  • 執筆者の写真: Hiroyuki Ohe
    Hiroyuki Ohe
  • 2020年4月30日
  • 読了時間: 4分

更新日:2020年5月1日



 ウィリアムソン マーレー他編『戦略の形成』(上下巻、ちくま学芸文庫)を読了した。本書は、アテナイからイスラエルまでポイントごとに戦略がいかに形成され、またされなかったを概観するものであるが、明時代の中国大陸史こそ触れられるものの東アジアについてのセクションがない。

 しかし、第19章の「おわりに」には、途端に日本が頻出してくるのである。

 「過去から未来へ」というセクションでは、下記のように書かれている。


  •  「マッカーサー憲法によって、ある程度カモフラージュはされているが、日本という「資本主義開発志向国家」は民主主義的ではなく、資本主義的でもない。公私の区別、そして国家と社会の区別は不明確である。…日本の国民は、多い昔に明治の元老が植え付けようとした、人種に根差したような使命感の多くの部分を現在まで受け継いでいる。…ユダヤの世界史的陰謀の神話が広く関心をもって迎えられ、戦争中の中国、東南アジア、太平洋における日本の残虐行為はオーウェル的な表現を借りれば、「事実に仕立てられた虚偽(un-facts)」であるとされる。…もっとも優れた洞察力を持つ日本研究者の一人が指摘したように、1931年から1945年の大敗北の後も、日本国家が衝突を回避するために必要なハンドルとブレーキを備えるようになったとは言い難い」

  •  「経済が紛争から我々を解放してくれるのではないかとの希望的観測も、同様に現実のものになっていない…こうした環境の下での日本の躍進は、否定的な結果をも足らずのではないかと思わせる。極端な場合であるが、一つの可能性は、日本の貿易「相手国」が徐々に事実上の隷属的立場に置かれてしまうことである。もう一つの可能性は、…日本は単独で独自の大東亜共栄圏を支配する…。1945年以降において民主主義を正当化してきた主因は、歴史的必然ではなく、戦争における勝利とそのあとの繁栄であった。…〔経済的〕成功以外に国家の中核となるものや正当性の源泉を持っていないという事実は、世界経済が崩壊した場合に日本が恐るべき突然変異を遂げるのではないかと懸念を抱かせる。」


 何ともおどろおどろしい文体である。私が読んだのは、邦訳であるため、訳者の主観が入っているかもしれないが、この文章を読めば、少なくともこの著者から、日本が大いに警戒されていることが分かる。このセクションを書いたマクレガー・ノックス氏は、アメリカ人でLSEで長らく国際史を担当していた。そうなるとある一定の層においては、日本については上記のような評価がされていると考えるべきであろう。


 引用した箇所の多くは、歴史認識の問題であり、我々としては、自国の歴史を正しく学ぶことに尽きるが、他方で、我が国の政治を考えるにあたって、日本が起こすアクションが諸外国にどのように評価されうるのかを考える参考になるといえるであろう。

 筆者も認めているように、我が国の民主主義は、マッカーサー憲法によってカモフラージュされてしまっている。しかし、そのカモフラージュされた中身である日本の捉え方は筆者と真逆である。あたかもマッカーサー憲法によって民主主義が到来したようにみえるが、大日本帝國憲法においても間接民主主義や自由民主主義は達成されていたのである。

 アジアの小国であった我が国が、米国と戦争をするまで至ったこと、そして我が国が粘り強く戦い続けていたことにつき、欧米は恐れおののいている(なお、ノックス氏は葉隠を引用しているが、葉隠が日本人のバイブルになっていたとはいえないであろう)。

 バブル経済中において、日本が東京都の山手線内側の土地価格でアメリカ全土が買えるときにおいても、日本が「恐るべき突然変異」を遂げる可能性は万に一つもなかったのではないか。むしろ、マクレガー氏のような指摘を懸念して、我が国は自国の矜持を捨ててまで経済的繁栄に勤しむしかなかったのだと思われる。マクレガー氏の指摘は、マッチポンプか本当に日本人のことが分からないかのいずれかであろう。


 私達からすれば、まさしくマクレガー氏のような指摘をおそれ、経済的繁栄に勤しむことこそ非難されるべきことであり、私達が行うべきは誠に国史の回復、それにに基づいた諸政策である。ただし、私達の歩みが「突然変異」であるなどと指摘されるおそれがあることを私達は肝に銘じておかなければならないであろう。ただ、「突然変異」などと指摘されたところで、私達の歩みは変わるべきではないし、変わりはしないのである。

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