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殉国者の慰霊について考える

  • 執筆者の写真: Hiroyuki Ohe
    Hiroyuki Ohe
  • 2019年5月4日
  • 読了時間: 3分

 平成30年10月31日、靖國神社の小堀邦夫宮司(当時)が「天皇陛下に対して不敬な言葉遣い」をしたことなどを契機に、任期満了を前に宮司を退任したというニュースは一時期世間をにぎわした。

 小堀氏が、自費出版で作ったという本『靖國神社宮司、退任始末』という本がAmazonで売られていたため手に取った。


 本は、コンパクト(全体で54頁)であり、その内容は文藝春秋や月刊Hanada等で既に公刊報道されていることから目新しいものはない。「日本に何故、天皇がましますのか」という部分が追加されているが、同氏がこれまで記した著作からの抜粋である。


 靖國神社を巡るスキャンダル(内輪揉め)といえば、それまでであるし、小堀氏自身が発言の非を認めているため、「退任始末」についてコメントすべき点はないように思う。ただ、本書を通して、改めて二重の意味での靖國神社の特殊性を考える機会にはなった。

 

 一つは、成立の特殊性である。靖國神社の歴史は浅く創立150周年を今年迎えるところであり、明治天皇が国家のために命をささげた人々の御霊を慰め、その事績を永く後世に伝えることを目的に創建された神社である。要は鎮魂が目的の神社であり、成立当初の名前が東京招魂社であった。

 ここでいう国家のために命をささげた人々とは、明治政府の誕生に功績のあった坂本龍馬、吉田松陰、高杉晋作、橋本左内らを指している。ある意味明治政府に「都合のよい」人々が選ばれている。最後まで江戸幕府に尽くそうとした白虎隊や最終的には明治政府に対して抗った「英雄」西郷隆盛は祀られていない(ただし、西郷隆盛については、大日本帝國憲法発布に伴う大赦に基づき正三位が追贈されている)。


 もう一つは、成立の経緯と現状との間に大きなギャップがあるという特殊性である。靖國神社は、明治政府が作った鎮魂社であったにもかかわらず、大東亜戦争に敗戦後、靖國神社が、日本がアメリカに歯向かった元凶であるとして、GHQのいわゆる神道指令によって、政府の関与を停止させられた。

 政府の関与が止められたのみならず、昭和天皇が昭和50年に行幸啓されて以来、勅使こそ派遣されているものの、昭和天皇及び平成天皇ご自身がいらっしゃることはない事態が続いている。明治天皇の意向で作られた神社に、天皇が行幸されないというギャップが生じているのである。


 国家に命をささげた人々を慰霊するのは、政府として当然である。厚生労働省は、戦没者慰霊事業を種々行っている。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/senbotsusha/seido01/index.html

 しかし、このウェブサイトをみても靖國神社のことはどこにも出てこない。さらにいえば、大東亜戦争以外の戦争や紛争等で国家に命をささげた人々の慰霊については、私の調べた限りでは、政府として何を行っているというわけではない。

 上記の二つの特殊性がゆえに、我が国の政府が行っている慰霊は、骨抜きになってしまっているように思えてならない。


 政府として国家に命をささげた人々の慰霊をどのようにするかが明らかにならなければ、国家のために命をささげる人に対してあまりにも失礼である。

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